
私たちは「何をすべきか」は言えるのに、「本当は何を望んでいるのか」を言語化するのが苦手です。それには理由がある。ここでは“邪魔してくるもの”を、やさしく分解してみる。
このカテゴリは、まず私自身が本当に望むことを丁寧に見つけ、同時にあなたの望みを思い出す手がかりを置いていくための場所です。
社会の「正解フォーマット」が、思考の余白を奪う
評価・肩書き・安定・常識。これらは生きる上で大切なガイドだけれど、自分の答えより先に配置されてしまうと、思考がその枠に収まる。
「損をしない」「嫌われない」「外さない」という基準は便利だけど、“自分の歓び”を基準にした選択を後回しにさせてしまう。
安全を最優先する脳の性質(リスク回避)
脳は危険を避ける装置としてできている。未知は“危険かもしれない”と判断されやすい。
そのため望みが大きいほどブレーキが強くかかる。やりたいことなのに、身体が重くなるのは、しばしば防御反応の正常作動でもある。
「他者のまなざし」が作る、借りものの自己像
親・先生・職場・SNS。見られることを前提とした場所に長くいると、
「どう見られたいか」が「どう生きたいか」を上書きする。
こうして“演じやすい私”が前面に出て、本音の声量が下がる。
言語の限界と習慣の惰性
望みは最初、感覚や映像でやって来る。けれど私たちはそれを言葉に圧縮して扱おうとする。
この変換精度が低いと、“わかっているつもり”の抽象語(成功・自由・幸せ…)ばかりが並び、具体の手触りが失われる。
さらに、日々のルーティンは惰性の快適さを与える一方で、言語化に必要な微細な感覚の拾い直しを鈍らせる。
承認ループと比較癖
“いいね”や評価は瞬発的な快楽をくれる。
けれど外部承認は閾値が上がり続けるため、満たされにくい。比較も同様で、他人の物差しで自分を測る癖は、望みのチューニングを狂わせる。
結果、「もっと」「まだ」が口ぐせになり、現在地で感じられる小さな歓びが見えなくなる。
過去の痛みが作る“静かな回避”
失敗・拒絶・喪失の記憶は、似た状況を無意識で避けるプログラムをつくる。望みに近づくほど、昔の痛点と回路が再点灯して足がすくむことがある。「やりたいのに手が動かない」は、怠けではなく保身の学習成果だったりする。
完璧主義と二値思考
「やるなら完璧に」「できないならやらない」。
このゼロか百かの思考は、着手を遅らせ、可動域の小さな一歩を軽視させる。
望みは本来、微調整の連続で輪郭が出てくるのに、その機会自体を断ってしまう。
情報過多と注意の分散
日々、情報は洪水のように押し寄せる。開いたタブの数だけ、意識は裂かれる。注意は有限資源。散らばった注意では、かすかな自分の声まで届かない。“静けさを確保する設計”は、望みの聴き取りにとって環境整備の核心だ。
サイコサイバネティクスと「サーボ機構(servo-mechanism)」
整形外科医マクスウェル・マルツが『サイコ・サイバネティクス』で提案したのが、人間の心には目標を追尾する自動調整システム(サーボ機構)がある、という考え方。ミサイルや温度調節のように、目標を定めると誤差を検出して自動的にコース修正を続け、到達に向けて最適化が起きる、という比喩です。
ポイントは3つ。
- 目標(ゴール)が“明確”であること
ぼんやりした願いではなく、具体的な絵で思い描くこと。期日・状況・感情・身体感覚まで含めて“映画のワンシーン”のように。 - セルフイメージ(自己像)が“それにふさわしい自分”で更新されていること
「私は達成する側だ」という内的コンセンサスがあるほど、サーボ機構は誤差を恐れず修正します。
逆に「私には無理」という自己像は“失敗のサーボ”としても作動し、達成のチャンスを無意識に回避します。 - 繰り返しの“想起”と“小さな行動”
脳は一度きりの宣言ではなく、繰り返し提示される映像と連動した行動に反応して学習します。
目標の再想起 → 微調整 → フィードバック、のループが大事。
この考え方は、注意のフィルタ(いわゆるRASの働き)や運動学習の仕組みと相性がよく、「探すと見えてくる」「やってみると上手くなる」を説明します。難しく言えば、望み=ターゲットをはっきり“与える”と、環境の中から関連手がかりを拾う感度が上がり、行動の精度も上がるということ。
「本当の望み」を見つけるミニワーク
以下は5〜10分でできる、サーボ機構に“座標”を渡すための下ごしらえ。
1)否定語禁止の宣言(今の言葉でOK)
- 「〜したくない」ではなく「〜したい」で書く。
- 例:「疲れない働き方」→「集中と回復のリズムで働く」。
2)シーン化する(映像+音+匂い+手触り)
- 例:朝9時、窓からの柔らかい光。温かいマグ、カレンダーには“◯◯案件・締切クリア”のチェック。肩は軽く、胸は広く。スマホには“ありがとう”のDM。
3)“いまの延長”ではなく“望む延長”で
- 「現状でできそう」ではなく、「本当に望む密度」で描く。ここで遠慮しない。
4)1ミリの行動を決める
- 今日の可動域で最小の一歩。
- 例:タスク管理の見出しを「やること」→「叶えたいことの進捗」にリネーム/寝る前60秒、シーンを再生する。
ここまで読んでくれたあなたが、少しでも自分の内側の声に耳を澄ませる時間を持てたならうれしいです。
その声を確かめるために、ここに一枚のカードを置いておきます。
「あなたの本当の望み」
参考になれば幸いです。
あなたの本当の望み
深呼吸して下のカードから1枚引いてください


